孙子兵法日文版·九地篇·第十一·〈脱兎の ごと く 進攻せ よ 〉

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孙子兵法日文版·九地篇·第十一·〈脱兎の ごと く 進攻せ よ 〉

作者:孙武

出自————《孙子兵法日文版》《军事地理》

出自————《中国古代历代兵书》

孫子曰わく 、

兵を 用う る に は 、 散地あ り 、 軽地あ り 、 争地あ り 、 交地あ り 、 衢[く ] 地あ り 、 重地あ り 、 ひ [土己] 地あ り 、 囲地あ り 、 死地あ り 。

諸侯自ら 其の地に 戦う 者を 、 散地と 為す。

人の 地に 入り て 深から ざる 者を 、 軽地と 為す。

我れ得た る も 亦た 利、 彼得る も亦た 利な る 者を 、 争地と 為す。

我れ以て 往く べく 、 彼れ以て 来た る べき 者を 、 交地と 為す。諸侯の 地四属し 、 先ず至っ て 天下の 衆を 得る 者を 、 衢地と 為す。人の 地に 入る こ と 深く 、 城邑に 背く こ と 多き 者を 、 重地と 為す。山林? 険阻? 沮沢、 凡そ 行き 難きの 道な る 者を 、 [土己] 地と 為す。

由り て 入る 所の も の 隘く 、 従って 帰る 所の も の迂に し て 、 彼れ寡に し て 以て 吾の衆を 撃つべき 者を 、 囲地と 為す。

疾戦すれば則ち 存し 、 疾戦せざれば則ち 亡ぶ者を 、 死地と 為す。

是の 故に 、 散地に は 則ち 戦う こと 無く 、 軽地に は 則ち 止ま る こ と無く 、 争地に は則ち 攻む る こ と 無く 、 交地に は 則ち 絶つ こ と 無く 、衢地に は 則ち 交を 合わせ、 重地には 則ち 掠め 、 [土己] 地に は 則ち行き 、 囲地に は則ち 謀り 、 死地には 則ち 戦う 。

 

古え の 善く 兵を 用う る 者は 、 能く 敵人を し て 前後相い 及ばず、 衆寡相い 恃ま ず、 貴賎相い 救わず、上下相い 扶け ず、 卒離れて 集ま らず、 兵合し て 斉わざら し む 。 利に合え ば而ち 動き 、 利に 合わざれば而ち 止ま る 。

敢え て 問う 、 敵 衆整に し て 将[ま さ ] に 来た ら ん と す。 こ れを待つ こ と 若何。

曰わく 、 先ず其の 愛する 所を 奪わば、 則ち 聴かん 。 兵の 情は 速を主と す。 人の 及ばざる に 乗じ て 不虞の 道に 由り 、 其の 戒め ざる 所を攻む る な り と 。

凡そ 客た る の道、 深く 入れば則ち 専ら に し て 主人克た ず。 饒野に掠む れば三軍も 食に 足る 。 謹め 養い て 労する こ と 勿く 、 気を 併わせ力を 積み 、 兵を 運ら し て 計謀し 、測る べから ざる を 為し 、 こ れを 往く 所な き に 投ずれば、 死すと も 且[は ] た 北[に ] げず。 士人 力を 尽す、 勝焉んぞ得ざら ん や 。 兵士は 甚だし く 陥れば則ち 懼れず、往く 所な ければ則ち 固く 、 深く 入れば則ち 拘し 、 已む を 得ざれば則ち 闘う 。 是の 故に 其の 兵、 修め ずし て 戒め 、 求め ずし て 得、 約せずし て 親し み、 令せ ずし て 信な り 。祥を 禁じ 疑い を 去ら ば、 死に 至るま で之[ゆ ] く 所な し 。 吾が士に余財な き も 貨を 悪[に く ] む に は非ざる な り 。 余命な き も 寿を 悪むに は 非ざる な り 。 令の 発する の 日、士卒の 坐する 者は 涕[な み だ] 襟を 霑[う る お] し 、 偃[え ん ] 臥する 者は 涕 頤[あ ご] に 交わる 。こ れを 往く 所な き に 投ずれば、諸? かい [歳リ ] の 勇な り 。

 

故に 善く 兵を 用う る 者は 、 譬えば率然の 如し 。 率然と は常山の 蛇な り 。 其の 首を 撃て ば則ち 尾至り 、其の 尾を 撃て ば則ち 首至り 、 其の中を 撃て ば則ち 首尾倶に 至る 。

敢え て 問う 、 兵は率然の 如く なら し む べき か。

曰わく 可な り 。 夫れ呉人と 越人と の 相い 悪む や、 其の 舟を 同じ くし て 済[わた ] り て 風に 遭う に 当た り て は 、 其の相い 救う や 左右の手の 如し 。 是の 故に 馬を 方[つ な ]ぎ て 輪を 埋む る と も 、 未だ恃む に足ら ざる な り 。 勇を 斉[と と の ]え て 一の 若く に する は 政の 道なり 。 剛柔皆な 得る は地の 理な り 。故に 善く 兵を 用う る 者、 手を 攜[たずさ ] う る が若く に し て 一な る は 、人を し て 已む を 得ざら し む る なり 。

将軍の 事は 、 静かに し て 以て 幽[ふ か] く 、 正し く し て 以て 治まる 。 能く 士卒の耳目を 愚に し て 、こ れを し て 知る こ と 無から し む 。其の 事を 易[か] え 、 其の 謀を 革[あ ら た ] め 、 人を し て 識る こ と無から し む 。 其の 居を 易え 其の 途を 迂に し 、 人を し て 慮る こ と を 得ざら し む 。 帥[ひ き ] い て こ れと期すれば高き に 登り て 其の 梯を 去る が如く 、 深く 諸侯の 地に 入り て其の 機を 発すれば群羊を 駆る が若し 。 駆ら れて 往き 、 駆ら れて 来たる も 、 之[ゆ ] く 所を 知る 莫し 。三軍の 衆を 聚め て こ れを 険に 投ずる は 、 此れ将軍の 事な り 。 九地の変、 屈伸の 利、 人情の 利は 、 察せざる べから ざる な り 。

凡そ 客た る の道は、 深け れば則ち 専ら に 、 浅ければ則ち 散ず。

国を 去り 境を 越え て 師あ る 者は絶地な り 。 四達する 者は衢地な り 。入る こ と 深き 者は 重地な り 。 入るこ と 浅き 者は 軽地な り 。 背は 固にし て 前は 隘な る 者は囲地な り 。 往く 所な き 者は 死地な り 。

是の 故に 散地に は吾れ将[ま さ ]に 其の 志を 一に せ ん と す。 軽地には 吾れ将に こ れを し て 属[つ づ]かし め ん と す。 争地に は吾れ将に其の 後を 趨[う な が] さ ん と す。交地に は 吾れ将に 其の 守り を 謹しま ん と す。 衢地に は吾れ将に 其の結びを 固く せ んと す。 重地に は吾れ将に 其の 食を 継がん と す。 [土己] 地に は 吾れ将に 其の 塗[み ち ]を 進め ん と す。 囲地に は吾れ将に其の 闕[けつ ] を 塞がん と す。 死地に は吾れ将に こ れに 示すに 活[い ] き ざる を 以て せ ん と す。故に 兵の 情は、 囲ま る れば則ち禦ぎ 、 已む を 得ざれば則ち 闘い 、過ぐ れば則ち 従う 。

是の 故に 諸侯の 謀を 知ら ざる 者は 、 予め 交わる こ と 能わず。 山林?険阻? 沮沢の 形を 知ら ざる 者は、軍を 行[や] る こ と 能わず。 郷導を 用い ざる 者は、 地の 利を 得る こと 能わず。 此の三者、 一を 知ら ざれば、 覇王の 兵に は非ざる な り 。夫れ覇王の 兵、 大国を 伐つ と き は則ち 其の 衆 聚ま る こ と を 得ず、威 敵に 加わる と き は 則ち 其の 交合する こ と を 得ず。 是の 故に 天下の 交を 争わず、 天下の 権を 養わず、己れの 私を 信[の ] べて 、 威は敵に 加わる 。 故に 其の 城は抜く べく 、其の 国は 堕[やぶ] る べし 。 無法の 賞を 施し 、 無政の 令を 懸く れば、三軍の 衆を 犯[も ち ] う る こ と 一人を 使う が若し 。 こ れを 犯う る に事を 以て し て 、 告ぐ る に 言を 以てする こ と 勿かれ。 こ れを 亡地に 投じ て 然る 後に 存し 、 こ れを 死地に陥れて 然る 後に 生く 。 夫れ衆は害に 陥り て 然る 後に 能く 勝敗を 為す。

故に 兵を 為すの 事は 、 敵の 意を順詳する に 在り 。 并一に し て 敵に向かい 、 千里に し て 将を 殺す、 此れを 巧み に 能く 事を 成す者と 謂うな り 。 是の 故に 政の 挙な わる る の日は 、 関を 夷[と ど] め 符を 折[くだ] き て 其の 使を 通ずる こ と 無く 、廊廟の 上に き び[厂艸属] し く して 以て 其の 事を 誅[せ ] む 。 敵人開闔[かい こ う ] すれば必ら ず亟[すみや ] かに こ れに 入り 、 其の愛する 所を 先き に し て 微[ひ そ ]かに こ れと 期し 、 践墨[せ ん も く ]し て 敵に 随[し た が] い て 以て 戦事を 決す。 是の故に 始め は 処女の如く に し て 、 敵人 戸を 開き 、 後は 脱兎の 如く に し て 、 敵人 拒ぐに 及ばず。

〈九種の 地勢と そ の 戦術〉

土地の 形状と は 、 軍事の 補助要因であ る 。 そ こ で軍を 運用する 方法に は、

: 散地(軍の 逃げ去る 土地)

: 軽地(軍の 浮き 立つ 土地)

: 争地(敵と 奪い 合う 土地)

: 交地(往来の 便利な 土地)

: 衢{く } 地(四通八達の 中心地)

: 重地(重要な 土地)

: 泛{は ん } 地(軍を 進め に く い 土地)

: 囲地(囲ま れた 土地)

: 死地(死すべき 土地)

があ る 。

(一) 諸侯が自国の領内で戦う の が、 散地であ る 。

(二) 敵国内に 侵入し て も 、 ま だ深入り し て い な い のが、 軽地であ る 。

(三) 自軍が奪い 取れば味方に 有利と な り 、 敵軍が奪い 取れば敵に 有利に な る の が、 争地であ る 。

(四) 自軍も 自由に 行く こ と ができ 、 敵軍も 自在に 来る こ と ができ る の が、 交地であ る 。

(五) 諸侯の 領地が三方に 接続し て い て 、 そ こ に 先着すれば、 諸国と よ し みを 通じ て 天下の 人々 の 支援が得ら れる の が、 衢地であ る 。

(六) 敵国奥深く 侵入し 、 多数の敵城を 後方に 背負って い る の が、 重地であ る 。

(七) 山林や 沼沢地を 踏み 越え る な ど、 およ そ 進軍が難渋する 経路であ る の が、 泛地であ る 。

(八) そ れを 経由し て 中へ入り 込む通路は 狭く 、 そ れを 伝っ て そ こ から 引き 返す通路は 曲がり く ねっ て 遠く 、 敵が寡兵で味方の 大部隊を 攻撃でき る のが、 囲地であ る 。

(九) 突撃が迅速であ れば生き 延びる が、 突撃が遅れればた ち ま ち 全滅する の が、 死地であ る 。

し た がっ て 、

: 散地では、 戦闘し て は な ら な い 。

: 軽地では、 ぐ ずぐ ずし て は な ら な い 。

: 争地では 、 敵に 先に そ こ を 占拠さ れた 場合に は攻め かかっ て は な ら な い 。

4 : 交地では、 全軍の隊列を 切り 離し て は な ら な い 。

: 衢地では、 諸侯た ち と 親交を 結ぶ。

: 重地では 、 敵情を 巻い た り せずに すばや く 通り 過ぎ る 。

: 泛地では、 軍を 宿営さ せ ずに 先へ進め る 。

: 囲地では、 潰走の危険を 防ぐ 策謀を め ぐ ら せる 。

: 死地では、 間髪を い れずに 死闘する 。

昔の 戦争の 達人は 、 敵軍に 前軍と 後軍と の 連絡ができ な い よ う に さ せ 、 大部隊と 小部隊と が助け 合え な いよ う に さ せ 、 身分の 高い 者と 低い 者と が互い に 救い 合わず、 上下の 者が互い に 助け 合わな い よ う に さ せ、 兵士た ち が離散し て 集合せず、 集合し て も 整わな い よ うに さ せた 。 こ う し て 、 味方に 有利な 状況に な れば行動を 起こ し 、 有利に な ら な ければま た の 機会を 待っ た のであ る 。

Q: 敵が秩序だっ た 大軍でこ ち ら を 攻め よ う と し て いる と き に は 、 どのよ う に し て そ れに 対処し た ら よ かろう か。

A: 相手に 先ん じ て 、 敵の 大切に し て い る も の を 奪取すれば、 敵は こ ち ら の 思い どおり に な る だろ う 。 戦争の 実状は 迅速が第一であ る 。 敵の 準備中を 利用し て 、思い がけ な い 方法を 使い 、 敵の 備え の な い 所を 攻撃する こ と だ。

〈敵国深く 進入せ よ 〉

およ そ 、 敵国内に 進行する 方法と し て は 、

徹底的に 奥深く ま で進攻し て し ま え ば、兵士が結束する から 、 散地で戦う 迎撃軍は対抗でき な い 。

肥沃な 土地で掠奪すれば、 全軍の 食料も 充足する 。

慎重に 兵士た ち を 休養さ せ て は 疲労さ せ な い よ うに し 、 士気を 一つに ま と め 、 戦力を 蓄え 、 複雑に 軍を移動さ せ て は 策謀を め ぐ ら せ て 、 自軍の 兵士た ち が目的地を 推測でき な い よ う に 細工し な がら 、 最後に 軍を八方ふ さ がり の 状況に 投げ込め ば、 兵士た ち は死んでも 敗走し た り はし な い 。 どう し て 死に も の ぐ る い の勇戦が実現さ れな い こ と があ ろ う か。 士卒はと も に 死力を 尽く す。

兵士た ち は 、 あ ま り に も 危険な 状況に はま り こ んでし ま う と 、 も はや 危険を 恐れな く な る 。どこ に も 行き 場がな く な っ て し ま う と 、 決死の 覚悟を 固め る 。

敵国内に 深く 入り 込ん でし ま う と 、 一致団結する 。逃げ場の な い 窮地に 追い つ め ら れて し ま う と 、 奮戦力闘する 。

だから 、 そ う し た 絶体絶命の 外征軍は、 こ と さ ら に指揮官が調教し な く て も 、 自分た ち で進ん で戒め 合う 。

口に 出し て 要求し な く て も 、 期待通り に 動く 。

い さ かい を 禁ずる 約束を 交わさ せな く て も 、 自主的に 親し み 合う 。軍令の 罰則で脅かさ な く て も 、 任務を 忠実に 果たす。

軍隊内での 占い ごと を 禁止し て 、 僥倖が訪れて 生還でき る の では な い かと の 疑心を 取り 除く な ら ば、 戦死する ま で決し て 逃げ出し た り はし な い 。

わが軍の 兵士た ち が余分な 財貨を 持ち 歩かな い から と い っ て 、 そ れは何も 財貨を 嫌っ て のこ と ではない 。 今こ こ で死ぬ以外に 他の 死に 方を 考え な い から とい っ て 、 そ れは何も 長生き を 嫌っ て の こ と では な い 。

決戦の 命令が発せら れた 日に は 、 兵士た ち の 座り 込ん でい る 者は 、 ぽた ぽた と こ ぼれ落ち る 涙の し ずく で襟を ぬら し 、 横た わっ て い る 者は 、 両目から あ ふれ出る 涙の 筋が、 頬を 伝っ て あ ごの 先に 結ぶ。 こ う し た 決死の 兵士た ち を 、 どこ に も 行き 場の な い 窮地に 投入すれば、 全員が勇敢に な る の であ る 。

そ こ で、 戦争の 上手な 人は 、 た と え ば率然{そ つ ぜん } の よ う な も の であ る 。 率然と い う の は 、 常山に いる 蛇の こ と であ る 。 そ の 頭を 撃つ と 尾が助けに 来るし 、 そ の 尾を 撃つ と 頭が助け に 来る し 、 そ の 腹を 攻撃する と 頭と 尾と で一緒に かかっ て く る 。

Q : 軍隊はこ の 率然の よ う に する こ と ができ る か。

A: でき る 。

そ も そ も 、 呉の国の 人と 越の 国の 人と は互い に 憎みあ う 仲であ る が、 そ れでも 一緒に 同じ 船に 乗っ て(呉越同舟) 、 川を 渡り 、 途中で大風に あ っ た 場合に は 、彼ら は左手と 右手と の 関係の よ う に 密接に 助け 合うも の であ る 。

こ う い う わけで、 馬を つ な ぎ止め 、 車輪を 土に 埋めて 陣固め を し て み て も 、 決し て 充分に 頼り に な る も のでは な い 。 軍隊を 、 勇者も 臆病者も 等し く 勇敢に 整える の は、 そ の 治め 方に よ る の であ る 。 剛強な 者も 柔弱な 者も 等し く 充分な 働き を する の は 、 土地の 形勢の道

理に よ る も の であ る 。

だから 、 戦争の 上手な 人が、 ま る で手を つな い でいる かの よ う に 軍隊を 一体に さ せ 、 率然の よ う に さ せるの は 、 兵士た ち を 、 戦う ほ かに どう し よ う も な い よ うな 条件に 置く から であ る 。

将軍た る 者の 仕事は、 も の 静かで奥深く 、 正大でよ く整っ て い る 。

士卒の 耳目を う ま く く ら ま し て 、 軍の 計画を 知ら せな い よ う に する 。

そ の し わざを さ ま ざま に 変え 、 そ の策謀を 更新し て 、人々 に 気づかれな い よ う に する 。

そ の 駐屯地を 転々 と 変え 、 そ の 行路を 迂回し て と って 、 人々 に 推測さ れな い よ う に する 。

軍隊を 統率し て 任務を 与え る と き に は、 高い と こ ろへ登ら せ て から そ の梯子を 取る よ う に 、 戻り た く て も戻れな い よ う に する 。

深く 外国の 土地に 入り 込ん で決戦を 起こ すと き には 、 羊の 群れを 追い や る よ う に 、 兵士た ち を 従順に する 。

追い や ら れて あ ち こ ち と 往来する が、 どこ に 向かって い る かは誰に も わから な い 。 全軍の 大部隊を 集めて 、 そ の すべて を 決死の 意気込みに する よ う な 危険な土地に 投入する 。 そ れが将軍た る 者の 仕事であ る 。

九と おり の 土地の形勢に 応じ た 変化、 状況に よ っ て軍を 屈伸さ せ る こ と の 利害、 そ し て 人情の 自然な 道理に つ い て は、 充分に 考え な け ればな ら な い 。

およ そ 、 敵国に 進撃し た 場合の やり 方と し て は、 深く 入り 込め ば団結する が、 浅け れば逃げ去る も の である 。

: 本国を 去り 、 国境を 越え て 軍を 進め た 所は、 絶地であ る 。

: 絶地の 中で、 四方に 通ずる 中心地が、 衢地である 。

: 深く 進入し た 所が、 重地であ る 。

: 少し 入っ た だけ の 所が、 軽地であ る 。

: 背後が険し く て 、 前方が狭い のが、 囲地であ る 。

: 行き 場の な い の が死地であ る 。

散地な ら ば、 兵士た ち が離散し やすい から 、 自分は兵士た ち の 心を 統一し よ う と する 。

軽地な ら ば、 軍がう わつ い て い る から 、 自分は軍隊を 離れな い よ う に 連続さ せ よ う と する 。

争地な ら ば、 先に 得た 者が有利であ る から 、 自分は遅れて い る 部隊を 急がせよ う と する 。

交地な ら ば、 通じ 開けて い る から 、 自分は 守備を 厳重に し よ う と する 。

衢地な ら ば、 諸侯た ち の 中心地であ る から 、 自分は同盟を 固め よ う と する 。

重地な ら ば、 敵地の 奥深く であ る から 、 自分は軍の食料を 絶やさ な い よ う に する 。

泛地な ら ば、 行動が困難であ る から 、 早く 行き 過ぎよ う と する 。

囲地な ら ば、 逃げ道が開け ら れて い る も の であ る から 、 戦意を 強固に する た め に 、 自分は そ の 逃げ道を ふさ ごう と する 。

死地な ら ば、 力い っ ぱい 戦わな け れば滅亡する のだから 、 自分は軍隊に と て も 生き 延びら れな い こ と を 認識さ せよ う と する 。

そ こ で、 兵士た ち の 心と し て は 、

囲ま れた な ら 、 命ぜら れな く と も 抵抗する 。

戦わな い でおれな く な れば、 激闘する 。

あ ま り に も 危険であ れば、 従順に な る 。

(一) 諸侯た ち の 腹の う ち がわから な い の では、 前もっ て 同盟する こ と は でき な い 。

(二) 山林? 険し い 地形? 沼沢地な どの地形がわからな い の では、 軍隊を 進め る こ と は でき な い 。

(三) そ の土地の 案内役を 使え な い の では 、 地形の 利益を 収め る こ と は でき な い 。

こ れら 三つ の こ と は 、 そ の 一つ でも 知ら な い の では 、 覇王の 軍では な い 。

そ も そ も 、 覇王の 軍は、 も し 大国を 討伐すれば、 その 大国の 大部隊も 集合する こ と ができ な い 。 も し 威勢が敵国を おおえ ば、 そ の 敵国は孤立し て 、 他国と 同盟する こ と ができ な い 。 こ う い う わけで、 天下の 国々 との 同盟を 務め る こ と を せず、 ま た 天下の 権力を 自分の身に 積み 上げる こ と を し な い でも 、 自分の 思い どおり勝手に ふ る ま っ て い て 、 威勢は敵国を おおっ て い く 。だから 、 敵の 城も 落と せる し 、 敵の 国も 破れる のである 。

ふ つう の き ま り を 越え た 重賞を 施し 、 ふ つ う の 定めに こ だわら な い 禁令を 掲げる な ら 、 全軍の 大部隊を 働かせ る の も 、 た だの一人を 使う よ う な も の であ る 。

軍隊を 働かせる のは 、 任務を 与え る だけ に し て 、 その 理由を 説明し て はな ら な い 。

軍隊を 働かせる のは 、 有利な こ と だけを 知ら せて 、そ の 害に な る こ と を 告げて は な ら な い 。

誰に も 知ら れずに 、 軍隊を 滅亡すべき 状況に 投げ入れて こ そ 、 は じ め て 滅亡を 逃れる 。 死すべき 状況に 陥れて こ そ 、 はじ め て 生き 延びる 。 そ も そ も 、 兵士た ちは 、 そ う し た 危難に 陥っ て こ そ 、 はじ め て 勝敗を 自由に する こ と ができ る も の であ る 。

〈は じ め は 処女の ごと く 、 後は 脱兎の ごと く 〉

戦争を 遂行する 上での 要点は 、 敵の 意図に 順応し て調子を 合わせ る と こ ろ に あ る 。

敵の 進路と 行程に 歩調を 合わせ て 進軍し て 、 敵軍と

同一の 目的地を 目指し 、 千里も の遠方で正確に 会敵して 敵将を 倒すの は 、 こ れぞ鮮や かな 仕事ぶり と 称するの であ る 。

こ う し た わけだから 、 つい に 開戦の 政令が発動さ れた 日に は 、

国境一帯の 関所を こ と ごと く 封鎖する 。

通行許可証を 無効に する 。

敵国の 使節の 入国を 禁止する 。

廟堂の 上で廟議を おごそ かに 行な っ て 、 戦争計画に 決断を 下す。

い よ い よ 自軍が国境地帯に 進出し 、 敵側が不意を 衝かれて 防衛線に 間隙を 生じ た な ら ば、

必ずそ こ から 迅速に 侵入する 。

敵国がぜひ と も 防衛し た がる 地点に 、 先制の偽装攻撃を かけ る 。

出動し て く る 敵軍と 、 あ る 日時? あ る 地点で会敵し よ う と ひ そ かに 心を 決め る 。

先制攻撃地点を ひ そ かに 離脱し 、 全軍黙っ て 敵軍の 進撃路に 調子を 合わせ て 進む 。

予定通り に 敵軍を 捕捉し て 会戦に 入り 、 一挙に戦争の 勝敗を 決する 。

こ う し た わけで、最初の う ち は乙女の よ う に し おらし く 控え て い て 、 い ざ敵側が侵入口を 開け た と た ん 、あ と は追っ 手を 逃れる ウ サギ の よ う に 、 一目散に 敵国の ふ と こ ろ 深く 侵攻し て し ま え ば、も は や敵は防ぎよ う がな い の であ る 。

更新于:25天前

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孙子兵法日文版·虚実篇·第六·(無勢で多勢に 勝つ 方法)作者:孙武出自————《孙子兵法日文版》《作战指挥》出自————《中国古代历代兵书》 一孫子曰わく 、凡そ 先に 戦地に 処[お] り て 敵を 待つ者は佚し 、 後れて 戦地に 処り て 戦い に 趨[おも む ] く 者は労す。 故に 善く 戦う 者は 、 人を 致し..

孙子兵法日文版·勢篇·第五

孙子兵法日文版·勢篇·第五(全軍の 勢い を 操る )作者:孙武出自————《孙子兵法日文版》《作战指挥》出自————《中国古代历代兵书》一孫子曰わく 、凡そ 衆を 治むる こ と 寡を 治む るが如く な る は 、 分数是れな り 。衆を 闘わし むる こ と 寡を 闘わしむ る が如く な る は、 形名是れな り 。三軍の ..

孙子兵法日文版·形篇·第四·

孙子兵法日文版·形篇·第四·(必勝の 形を つく る )作者:孙武出自————《孙子兵法日文版》《作战指挥》出自————《中国古代历代兵书》   一孫子曰わく 、昔の 善く 戦う 者は先ず勝つ べから ざる を 為し て 、 以て 敵の 勝つべき を 待つ 。勝つべから ざる は己れに 在るも 、 勝つ べき は敵に 在り 。 故..

孙子兵法日文版·謀攻篇·第三·

孙子兵法日文版·謀攻篇·第三·(戦わずし て 勝つ )作者:孙武出自————《孙子兵法日文版》《战略运筹》出自————《中国古代历代兵书》一孫子曰わく 、凡そ 用兵の 法は 、 国を 全う するを 上と 為し 、 国を 破る はこ れに 次ぐ 。軍を 全う する を 上と な し 、 軍を破る はこ れに 次ぐ 。旅を 全う する ..

孙子兵法日文版·作戦篇·第二·

孙子兵法日文版·作戦篇·第二·(用兵と は ス ピードであ る )作者:孙武出自————《孙子兵法日文版》《战略运筹》出自————《中国古代历代兵书》   一孫子曰わく 、凡そ 用兵の 法は、馳車千駟? 革車千乗? 帯甲十万、千里に し て 糧を 饋[おく ] る と きは 、 則ち 内外の費? 賓客の 用? 膠漆の 材? 車甲の..

孙子兵法日文版· 計篇·第一·〈勝算は どち ら に あ る か〉

孙子兵法日文版· 計篇·第一·〈勝算は どち ら に あ る か〉作者:孙武出自————《孙子兵法日文版》《战略运筹》出自————《中国古代历代兵书》   一孫子曰わく 、兵と は国の 大事な り 。 死生の地、 存亡の 道、 察せ ざる べから ざる な り 。故に こ れを 経[は か] る に 五事を 以て し 、 こ れを 校..

孙子兵法日文版· 序

孙子兵法日文版· 序作者:孙武出自————《孙子兵法日文版》《日文自序》出自————《中国古代历代兵书》孫子の 兵法戦略に 関し て は 、 古今東西の最良の 書が『孫子』 であ る と 思われる 。 ク ラ ウ ゼヴィ ッ ツの『戦争論』 も 孫子に は およ ばな い 。 ナ ポレ オ ンは『孫子』 を 読み、 実戦で生かし て..